ベートーヴェン交響曲シリーズ 第5弾
ベートーヴェン 交響曲第9番 ニ短調 Op.125
「レオノーレ」序曲第3番
指揮: 北村憲昭
オーケストラ: スロバキア・国立交響楽団
録音場所: ウィーン・ムジークフェライン・大ホール
収録日: 2019年 10月 20日
使用楽譜: BÄRENREITER
URTEXT TP909(交響曲第9番 ニ短調 作品125)
スロバキア・フィルハーモニー所蔵版 (「レオノーレ」序曲第3番 作品72)
録音音源: 相川宏氏によって最新の機器(aiQualia社製の1bit-8ch録音機)で録音された物。
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録音エンジニア相川宏氏のホームページ: http://shop.aiqualia.jp/
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ハイパーレゾリューションのHP: http://www.hyper-resolution.com/Release/NKB-402.html
指揮者コメント
今までの演奏と同様に、作曲家の意図に極力沿うべく努力をした。
楽譜は、交響曲9番はBÄRENREITER URTEXT(原典版)TP909を使用。ただし今回は、オーケストラのメンバーにより旧来のパート譜を使っての書き込み訂正によるもので、完全なURTEXTの使用とは成っていない場所が多々ある。
「レオノーレ」序曲第3番は、スロバキア・フィルハーモニー所蔵の楽譜を使用。
此方は一部BÄRENREITER URTEXT BA8833の記述を参考に訂正をした。
楽譜の問題や意図は今までと同様なので詳しいコメントは省く。
「レオノーレ」序曲第3番は、よく知られた名曲であるのでこの作品を選んだ経緯については取り立てて意図はない。歌劇「フィデリオ」序曲や他の「レオノーレ」序曲より単独の作品としての完成度が高い事を重視した。
冒頭のレオノーレが地下の牢獄へ入っていくシーンの描写は、冒頭の響きの良さの為の私自身の高揚感もあり、若干明るくなったのは反省している。
その後のフィデリオの再会などは、うまく描けたのではないかと思っている。
今回の録音は、NKB10周年記念のウイーン楽友協会大ホールでの演奏会のプログラムであり、第9番交響曲の主題である「Freude」
すなわち喜びがテーマであり、序曲も含め5種類の「喜び」を、描き分けられればと思って臨んだ。
「レオノーレ」=夫婦の再会と解放、交響曲第1楽章=天地創造、第2楽章=生命の躍動、第3楽章=情愛、第4楽章=平和と友愛 である。
交響曲第9番は、私にとっても幾度となく演奏した作品でもあり、編成もミニマムからマキシムまでの経験を通じて、今回の編成は若干コーラスが多くなってバランスが崩れたが、最上であると確信している。コーラスは、弦楽器の数とほぼ同程度であるのが望ましいように思っている。
この交響曲は、8番までとまるっきり別人のような作品だが、やはりベートーヴェンであり、彼の集大成であるといっても過言ではないだろう。
私は彼の構想にハイドンの「天地創造」のようなものを書きたい欲求があったのではないかと思っている。
第1楽章の冒頭はそれをほうふつさせるものだが、それだけでなく全体の構成にも根底にそのような思想が含まれているように思っている。
そこに「喜び」が満ちていることに疑いはない。ハイドンの作品と同様に、喜びに満ちている。
第2楽章の中間部の長い繰り返しは、一般に演奏されない。そして最も印象的であるティンパニーのモチーフが5回目は通常pにされるが、楽譜通りにfのままとした。ここをfのままで演奏しているのは、私の記憶ではクレンペラーだけだと思っている。この部分は、自筆譜も含めどのスコアにもpにする記述はない。かつてからの慣習であろう。多分ではあるが、あのフルトヴェングラーの演奏にならったのではないだろうか。誰も彼の演奏に楯突く訳にはいかなかったのだろう。もうそろそろその呪縛を解いてもいいのではないだろうか。私は、やはりベートーヴェンのほうが正しいように思う。
3楽章は少しまどろっこしい。「田園」の第2楽章が思い起こされる。しかしかつての様ではない、ほろ苦い思い出だろう。しかし最後にはいい思い出として語っている。寂しさを残して。
第4楽章は、あくまでシンフォニーであり声楽曲ではないことに重点を注いだ。ややもするとカンタータになりこの楽章だけが単独の印象になりかねないからだ。コーラスがもう少し編成が小さくてもよかったかもしれない。
歌が入る部分は歌詞が占める比重が高い。しかし器楽だけの部分の方が作曲家の思いは良く分かる。その部分だけでも十分いい終楽章になったのではないだろうか。
しかし、このオーケストラと合唱はホールの響きと相まって大変に充実した響きにすることができた。
指揮者 北村憲昭
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録音データ
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