第1作 ベートーベン 交響曲第6番「田園」&「エグモント」序曲
指揮: 北村憲昭
オーケストラ: スロバキア・フィルハーモニー管弦楽団
録音場所: スロバキア ブラチスラバ スロバキア・ラジオ・ホール
収録日: 2010年 5月 8、9日
今聞こえておりますのは
「田園」第3楽章冒頭部分です
使用楽譜: BÄRENREITER
URTEXT TP906(交響曲第6番「田園」 ヘ長調 作品68)
BREITKOPF & HÄRTEL URTEXT Nr.
14640(序曲「エグモント」 作品84)
録音音源: 今回は計2種の音源が存在する。
1、スロバキアラジオのスタッフによる従来方式(24bitサンプリング)により編集された物。
2、最後の通し演奏を日本の技術者(村上輝生氏)によって最新の機器(KORG社製の1bit録音機)で録音された物。
*今回の 録音エンジニア村上輝生氏のホームページ: http://www.mu-s.com/
指揮者コメント
楽譜は上記のURTEXT(原典版)を使用。現在の常識として、私も作曲家の意図に極力沿うべく努力をした。
しかし何点かにおいてこの楽譜とは異っている。
第1点目は、テンポである。ベートーヴェン自身が記したテンポに私は疑問を感じていて、当時のメトロノームの目盛りに問題があり、約10%早いと主張して来た。ゆえにそれに沿ったテンポ設定が基準である。しかし、演奏の最大の目的を良い音での良い演奏としている以上、その時の状況に左右されてしまう事には問題を感じていない。結果的に全体に少し遅めの設定になった。特に最後に通して行った演奏の始まりはかなり遅くなった。これも演奏の丁寧さに伴う物で、否定する物ではなかった為にそのまま続行した。
第2点目は、楽譜にはないアゴーギク(テンポの変化)を何箇所かしている。これは演奏中に自然発生的に行われたもので、むしろ良いアンサンブルの結果としての事であるので、このまま訂正はしなかった。
第3点目は、些細な事ではあるが、2楽章の6小節目などにあるフレーズ最後のデクレッシェンドのスタートの位置を8分音符♪1つ分後ろへずらした事である。これは記述的には正しいが、演奏者がこれに気を取られこの拍の最初のイ音が効果を失う事になるのを防ぐ為にあえて行った。極力譜面(作曲者)に忠実であろうと努力した結果だ。
今回「田園」を録音するにあたって、私はこの地が最適と選んだ。それは、何よりベートーヴェンがウイーン郊外(ハイリゲンシュタット)で作曲し、田舎の人たちの風景を取り入れていることに着目していたからである。彼が何に興味を引かれたかだが、私は言葉のイントネーションにあると思っている。
彼ベートーヴェンはボン生まれ。すなわちフランス語圏に極めて近い。このスロバキアやチェコはスラブ系の言語を話す。一番の違いは、話す時のイントネーションのアクセントが第1シラブルにある事だ。西欧言語は冠詞が存在する為に特別な場合を除いてその様な事はない。特に3楽章の踊りの旋律に見られるように、前半の3拍子はアウフタクトを持つ旋律で後半の2拍子にはそれが無い。1楽章にも馬車が走っているような同じ旋律でありながら、提示部と展開部等では違ったイントネーションになっている。それらの違いを自然に行える人達のオーケストラだと考えた訳である。予想に違わずこれは良い選択であったと喜んでいる。
カップリングに「エグモント」を選んだ理由も複数ある。先ずは、今年が丁度作曲年から2百年目に当る事。これには大きな意味はない。もう一つは、ご存知のように共産体制崩壊を経験した人達の共感への期待だ。さらに、この変革はビロード革命といわれたように悲惨な状態はなかったと聞く。あえて言えばこのエグモント伯の目指した理想の革命が実現したという事であろう。それを彼等がどの程度知っていたかは判らないが。
「田園」が非常にのどかで平和な情景である為、それと対比的なものをと思っての選曲でもあった。
何よりもこのオーケストラの弦の響きの豊かさをこの曲で紹介できた事は大きいと思う。それだけでなく「田園」で、このオーケストラのナイーブで真摯な音楽への姿勢を録音出来た事も大変な収穫であった。
このような質の良いオーケストラがあまり我が国で知られていない事は残念に思う。この機会に紹介できた事は本当に良かったと思っている。
改めてスロバキア・フィルハーモニーのメンバー、マネージャーの
Ms. Tatiana SCHEFEROVA と、Mr. Pavel HRUBY、そして通訳だけでなくブラチスラヴァ滞在中に色々とお世話になったMs. Kinga VALENTに感謝を述べたい。又録音に際しご尽力いただいた、スロバキア・ラジオのエンジニア
Mr. Hubert
GESCHWANDTNER、プロデューサーのMr. Emil NIZNANSKY、何より日本からご同行いただいた村上輝夫氏に深く御礼を申し上げたい。さらにこのプロジェクトを支えてくださっている方々、NKBの監事でありながら事務一般をお手伝いいただいた久木田光明氏、財務一般や英訳そしてスロバキア側との交渉をしていただいた北川啓微理事、又スーパーバイザーとしての水原琢秀副理事長に感謝を捧げます。
指揮者 北村憲昭
をそれぞれ載せております。
興味のある方はそちらもご覧下さい。
又以前出版しておりました
北村憲昭指揮モラビア・フィルハーモニーによる
シューマン交響曲第1番「春」 & 第4番 を
このたびのCD録音のエンジニア村上輝生氏によって
リマスターリングしたものを再版いたしますので
あわせてお聴きくださいませ。
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ベートーヴェン「田園」 − 枚
シューマン − 枚
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